とろけるチョコをあなたに
彼女のヒミツ
 青司と別れ、迎えに来た高級車に乗り込んで帰路に就いた。

 絵理は何だかそわそわして落ち着きがない。屋敷に着くとそそくさと自分の離れに引っ込み、机の上に置いてあった箱の中身を確認し始めた。

 明らかに様子がおかしい。

「絵理サマ。何をしていらっしゃるんですか?」

 オレが絵理の背後から声をかけると、彼女は文字通り飛び上がった。

 その動きがあまりにも小動物的で型通りだった為、思わず噴き出してしまいそうになった。

 だか狼狽したのも束の間、絵理は勢いよくこちらを振り向きざまに言い放った。

「おのれ何奴!」

 お前は襲撃を受けた武芸者か。

「何奴と言われても。この離れに常駐してるのはオレくらいしかいないだろ。
 なあ絵理、お前さっきからおかしいぞ。目は泳いでいるし挙動不審だし」

「きょ、挙動不審とは何事か!
 私はいつも通りだ。陣こそ、背後から気配を消して忍び寄り一体何をするつもりだったのだ!

 世が世なら振り向きざまに切り捨てられても文句は言えぬのだぞ」

 絵理の時代錯誤な発言はいつもの事なのでこの際気にしないことにして。問題は一体何故彼女はこんなにも平静を失っているかという事だった。
< 13 / 38 >

この作品をシェア

pagetop