とろけるチョコをあなたに
 絵理は殊勝に頷くとおそるおそる糖液をボウルに注いだ。移し終えただけで大量のエネルギーを消費したらしく、大きく息を吐いた。

 そしてまたブランデー入りの糖液を鍋に移し入れ、無言で息を止めたままこの作業を繰り返していた。

 あんなにおっかなびっくりやる必要はないのだが、気を抜いて雑になってしまうよりはいいだろう。

 混ぜ終わる頃には、絵理はすっかり消耗していた。

 肩で息をつき、激しい組み手を終えた後のようになっている。極度の緊張状態のまま作業をしていたのだろう。

 この後はこれを水差しに移し、さっき作ったコーンスターチの窪みに流し入れ、上からもコーンスターチを茶漉しで振り掛けるだけだ。

 注意してやらないと一気に糖液が流れ込んで型から溢れてしまうので、消耗しきった絵理には難しそうだ。

 そんなわけでこの作業も自分で行い、絵理には仕上げの振り掛け作業を担当してもらう事にした。

 ……重要な部分はほぼオレがやってしまったような気がするがまあいいか。
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