とろけるチョコをあなたに
 絵理は深々と溜息をつき、ケーキを食べ始めた。一口食べた後で、小さく切り分けたケーキをフォークに刺し、オレの目の前に差し出した。

「横着者め。今回は仕方がないから食べさせるくらいの事はしてやる。……私からは用意できなかったしな」

 予想外の展開に、オレは思わず固まった。

「え、いや、でも」

「さっさと食え」

 言われるままに、差し出されたケーキを口に含んだ。妙に照れくさくて、肝心の味が何だか解らない。味見の段階では美味かったはずだ。多分。

 ただ解るのは、口に広がる甘さと熱さ。

 ブランデーを使いすぎたせいなのか、絵理にケーキを口元まで運んでもらっているせいなのか、顔の火照りが治まらない。

 絵理はというと、そんなオレの動揺など素知らぬ顔で、ケーキの味を素直に絶賛していた。

 こいつには敵わないな、と半分諦めながら、オレは再び差し出されたケーキの味を確かめた。

<幕>
< 38 / 38 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

純愛バトラー

総文字数/131,157

恋愛(ラブコメ)401ページ

表紙を見る
守護者たちの饗宴 ―エメラルド・ナイト―

総文字数/3,199

ファンタジー6ページ

表紙を見る
懺悔の部屋・純愛編

総文字数/21,077

その他31ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop