《短編》−純愛−きみがくれたおと【完】
1=1
−あすか−


それから二人で、

広い公園まで歩いた。



公園のベンチに座り、


優を見ると、


優は空を見上げていた。



そして携帯をとりだし、


文字を打ちはじめた。



私は優の肩をそっとたたいた。



優は携帯を私に見せた。




《太陽は音がするの?》




太陽?

私が不思議な顔をすると

優はまた携帯をいじり始めた。



《太陽がサンサンとって。音がするのかずっと気になっていた。
でも聞くのが恥ずかしかった。》




私は首をふった。

私も携帯を取り出して文字を打った。



《太陽は音がしないよ》


優は携帯を見てゆっくりうなづいた。


そして

《今はどんな音がする?》


優は私をのぞきこんだ。



今?


この公園はすごく広くて穏やかで…



《今は静かだよ》





優は周りを見渡した。


そして笑った。


《俺と同じだ》


そうか…優はいつも音のない世界にいるんだ…






優の苦しみや、つらさは、

私にはわからないかもしれない。


でも


わかりたい


気持ちを共有したい



優の世界を知りたい。





《耳が聞こえて、うまく話しができればいいのに、こんなめんどくさいことさせてごめん》



え…

私は勢いよく首をふった。




「くあいいな…」



優はそういって頭を抱えた。


くあいいあ…?


悔しいな……………





優は泣いていた。


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