しゃんぐりら
「桜ちゃん、」
私の目の前で
先生は手をヒラヒラさせる
「・・・っは!」
「現実逃避も良いけど
ちゃんと古文にも強くなってね?」
先生が呆れたように
「それじゃあ」
じゃあ、と私も手を振り返す
先生は他の生徒さんのところへ
行ってしまいます
個別指導のこの塾では
座席は全て木版で仕切られていて
一人ひとりの席で
講師さんが授業を行う形式。
なので、授業の時間は
二人きり、で
私にとって至福の時間。
顔を手で覆って
訳も無くジタバタしてしまう
仕切りで見えてないから。