スキ
「うん……」
私は彼との間にいるダイスケをそっと抱き上げ、膝に乗せた。
ガランとした彼の部屋の中。
今日と明日の朝使うものが台所に乗せられているだけで。
後は大きなボストンバッグと、彼と、私と、ダイスケ。
できる事ならあのボストンバッグの中に入ってついて行きたい。
ねぇ、ダイスケ。
あんたもそう思うでしょ?
「ダイスケ、帰ろっか」
外はもう、日が沈み、真っ暗闇。
目の前にいるはずの太陽も、もう、私を照らしてはくれないんだ。
私はダイスケを抱いたまま立ち上がった。
「ヒナ……」
突然彼の手が、私の腕を掴む。
と、同時にダイスケがサッと私の胸から飛び降りた。
「……どうして……」
今まで一定の距離を絶対に崩さなかった彼。
部屋に上がっても、ダイスケを間に置いて、決してそれ以上踏み込もうとはしなかった彼。
なのに、どうして?
明日、私を置いて行くくせに。
ここに来て、私を抱きしめる彼。
「本当はずっと……こうしたかった」
どうして……。
「けど、東京行きはかなり前から考えてて」
「……」
「待ってろとは、言えないし、ヒナには幸せになってほしい……けど」
──ばか。
「っばかばか」
私は彼の胸をドンドンと叩いた。
「太陽があるから、私は幸せなのに」
「……?」
「……いなかったらヤキソバパン、食べれないんだから……」
私は泣きながら、彼の胸に顔を埋めた。
初めて一定の距離を崩した私達。
それは今までより、ずっと苦しい未来に続くのかもしれないけれど。
太陽の温もりは、どこよりも暖かい。
「……シャーペン、また貸してくれる?」
彼が聞く。
「飛行機で1時間かけて、借りに来て、いい?」
それは、待ってていいって事?
「遠距離は……慣れてるもん」
「え?」
私はそっと、足元にいるダイスケを指差した。
私達の関係はいつも猫1匹分の遠距離だった。
彼はちょっと驚いて、少し考えて、やっと気づいて。
「……だな」
って。
大好きなお日様の笑顔で、再び私を照らしてくれた。
私は彼との間にいるダイスケをそっと抱き上げ、膝に乗せた。
ガランとした彼の部屋の中。
今日と明日の朝使うものが台所に乗せられているだけで。
後は大きなボストンバッグと、彼と、私と、ダイスケ。
できる事ならあのボストンバッグの中に入ってついて行きたい。
ねぇ、ダイスケ。
あんたもそう思うでしょ?
「ダイスケ、帰ろっか」
外はもう、日が沈み、真っ暗闇。
目の前にいるはずの太陽も、もう、私を照らしてはくれないんだ。
私はダイスケを抱いたまま立ち上がった。
「ヒナ……」
突然彼の手が、私の腕を掴む。
と、同時にダイスケがサッと私の胸から飛び降りた。
「……どうして……」
今まで一定の距離を絶対に崩さなかった彼。
部屋に上がっても、ダイスケを間に置いて、決してそれ以上踏み込もうとはしなかった彼。
なのに、どうして?
明日、私を置いて行くくせに。
ここに来て、私を抱きしめる彼。
「本当はずっと……こうしたかった」
どうして……。
「けど、東京行きはかなり前から考えてて」
「……」
「待ってろとは、言えないし、ヒナには幸せになってほしい……けど」
──ばか。
「っばかばか」
私は彼の胸をドンドンと叩いた。
「太陽があるから、私は幸せなのに」
「……?」
「……いなかったらヤキソバパン、食べれないんだから……」
私は泣きながら、彼の胸に顔を埋めた。
初めて一定の距離を崩した私達。
それは今までより、ずっと苦しい未来に続くのかもしれないけれど。
太陽の温もりは、どこよりも暖かい。
「……シャーペン、また貸してくれる?」
彼が聞く。
「飛行機で1時間かけて、借りに来て、いい?」
それは、待ってていいって事?
「遠距離は……慣れてるもん」
「え?」
私はそっと、足元にいるダイスケを指差した。
私達の関係はいつも猫1匹分の遠距離だった。
彼はちょっと驚いて、少し考えて、やっと気づいて。
「……だな」
って。
大好きなお日様の笑顔で、再び私を照らしてくれた。