スキ
──バシンッ
私は机にあったノートを投げつけた。
でも大ちゃんは無表情のまま、静かにノートを拾い上げるだけ。
ずるい。
いつもいつもずっと高いところから、何でも見透かしたような瞳で私を見て。
たった4つ年下なだけの私を、子供扱いばかり。
「家庭教師なんか、もういらない」
私は、今度は教科書を大ちゃんに向かって投げつけた。
「……そう」
なのに、やっぱり冷静な彼は小さくため息つくように、落ちた教科書をまた拾う。
お隣に住んでる、大ちゃん。
子供の時から一緒にいた大ちゃん。
大ちゃんは昔から私を、妹のように面倒見てくれていて。
それは私が高校生になった今も変わらない。
でも、私は──。
「勉強したくないのはわかるけどさ、急に下がった成績心配する親の気持ちも考えろよ」
「……」
お母さんが、私の家庭教師をしてくれないか大ちゃんにお願いした時は、正直チャンスって思った。
部屋で2人きりで毎日過ごせば、私がただの妹なんかじゃなく、もう立派な“女”なんだって、気づいてくれるかもしれないって。
そしたら少しは私を恋愛対象として見てくれるかもしれないって。
私だって、成長してるんだもん。
だから、大ちゃんが家庭教師になってから毎日、私はいろんな方法でアプローチを開始したんだ。
肌を露出する服を着てみたり。
友達から借りた香水をつけてみたり。
年上の彼氏がいる友人に、色気のある仕草を学んだり。
胸元を強調させてみたり。
間近で瞳を見つめてみたり。
2時間かけて化粧をしてみたり。
たくさん、頑張ったのに。
先生である大ちゃんは、無反応だった。
そして今日は。
『キスしたくなる唇』というネーミングのグロスで、唇をプルンプルンにしてみたのに。
「んな事してる暇あったら少しは勉強しろよ」
って、呆れたように言うから。
──バシンッ
もう限界に達した私は、ノートを投げつけたんだ。
私は机にあったノートを投げつけた。
でも大ちゃんは無表情のまま、静かにノートを拾い上げるだけ。
ずるい。
いつもいつもずっと高いところから、何でも見透かしたような瞳で私を見て。
たった4つ年下なだけの私を、子供扱いばかり。
「家庭教師なんか、もういらない」
私は、今度は教科書を大ちゃんに向かって投げつけた。
「……そう」
なのに、やっぱり冷静な彼は小さくため息つくように、落ちた教科書をまた拾う。
お隣に住んでる、大ちゃん。
子供の時から一緒にいた大ちゃん。
大ちゃんは昔から私を、妹のように面倒見てくれていて。
それは私が高校生になった今も変わらない。
でも、私は──。
「勉強したくないのはわかるけどさ、急に下がった成績心配する親の気持ちも考えろよ」
「……」
お母さんが、私の家庭教師をしてくれないか大ちゃんにお願いした時は、正直チャンスって思った。
部屋で2人きりで毎日過ごせば、私がただの妹なんかじゃなく、もう立派な“女”なんだって、気づいてくれるかもしれないって。
そしたら少しは私を恋愛対象として見てくれるかもしれないって。
私だって、成長してるんだもん。
だから、大ちゃんが家庭教師になってから毎日、私はいろんな方法でアプローチを開始したんだ。
肌を露出する服を着てみたり。
友達から借りた香水をつけてみたり。
年上の彼氏がいる友人に、色気のある仕草を学んだり。
胸元を強調させてみたり。
間近で瞳を見つめてみたり。
2時間かけて化粧をしてみたり。
たくさん、頑張ったのに。
先生である大ちゃんは、無反応だった。
そして今日は。
『キスしたくなる唇』というネーミングのグロスで、唇をプルンプルンにしてみたのに。
「んな事してる暇あったら少しは勉強しろよ」
って、呆れたように言うから。
──バシンッ
もう限界に達した私は、ノートを投げつけたんだ。