スキ
力の抜けた私は空を見上げた。
そこにはやっぱり澄んだ青空が広がっていて。
まるで私を待ってくれてるように、優しく微笑む。
身を任せたら、吸い込んでくれるだろうか?
──突然、空しかなかった視界に泡が広がった。
「え……?」
よく見ればそれは風船で。
赤、白、黄色、水色、黄緑、ピンク。
たくさんの風船を掴んだピエロが目の前に立っている。
「風船はいかがですか?」
「……」
答えない私に、彼はそっと空色の風船を差し出した。
受け取ると、彼は小さく頷き、また歩き出す。
「ピエロさんっ」
私はなぜだか急に聞いてみたくなった。
「泡になった人魚姫は……」
それから300年、人の為になる事をして、どんな幸せを手に入れたんだろう?
王子を忘れられる時が、来たのだろうか?
ピエロが私の心の中にあった質問に答えてくれた。
「……人魚姫は、それから3日、人の為になる事をするのです」
──3日?
そして、持っていた風船を半分私に渡してきた。
すると
「風船ちょうだい」
ピエロの周りにいた子供達の半分が、私を囲む。
「そして、きっとまた恋をするのでしょう」
「……」
私は風船を配りながら、赤鼻を見た。
その声に、聞き覚えがあるような気がしたから。
「なんで、3日?」
彼はポリポリと鼻の頭を掻くと
「僕のバイト期間です」
ニカッと笑って、答えた。
昔、“人魚姫”を読んで、思った。
私は絶対泡になんかなるもんかって。
泡になるくらいなら、王子の胸にしっかりとナイフを突き刺すんだって。
お姫様を選ぶ見る目のない王子の為に、死を選ぶなんて馬鹿げてる。
でも。
泡の周りで笑う天使がいて。
優しく見守る青空があって。
鼻と同じだけ頬を赤く染める、ちょっぴりお節介なピエロがいて。
人魚姫のその先に、もっと素敵な未来が待っているのなら。
王子の幸せを素直に願ってあげるのも、悪くないのかもしれない。
「風船、ちょうだい」
「どうぞ」
今、私の手の中にあるのは、3年分の錆びた過去じゃなくて。
空色に揺れる、未来への切符だから。
そこにはやっぱり澄んだ青空が広がっていて。
まるで私を待ってくれてるように、優しく微笑む。
身を任せたら、吸い込んでくれるだろうか?
──突然、空しかなかった視界に泡が広がった。
「え……?」
よく見ればそれは風船で。
赤、白、黄色、水色、黄緑、ピンク。
たくさんの風船を掴んだピエロが目の前に立っている。
「風船はいかがですか?」
「……」
答えない私に、彼はそっと空色の風船を差し出した。
受け取ると、彼は小さく頷き、また歩き出す。
「ピエロさんっ」
私はなぜだか急に聞いてみたくなった。
「泡になった人魚姫は……」
それから300年、人の為になる事をして、どんな幸せを手に入れたんだろう?
王子を忘れられる時が、来たのだろうか?
ピエロが私の心の中にあった質問に答えてくれた。
「……人魚姫は、それから3日、人の為になる事をするのです」
──3日?
そして、持っていた風船を半分私に渡してきた。
すると
「風船ちょうだい」
ピエロの周りにいた子供達の半分が、私を囲む。
「そして、きっとまた恋をするのでしょう」
「……」
私は風船を配りながら、赤鼻を見た。
その声に、聞き覚えがあるような気がしたから。
「なんで、3日?」
彼はポリポリと鼻の頭を掻くと
「僕のバイト期間です」
ニカッと笑って、答えた。
昔、“人魚姫”を読んで、思った。
私は絶対泡になんかなるもんかって。
泡になるくらいなら、王子の胸にしっかりとナイフを突き刺すんだって。
お姫様を選ぶ見る目のない王子の為に、死を選ぶなんて馬鹿げてる。
でも。
泡の周りで笑う天使がいて。
優しく見守る青空があって。
鼻と同じだけ頬を赤く染める、ちょっぴりお節介なピエロがいて。
人魚姫のその先に、もっと素敵な未来が待っているのなら。
王子の幸せを素直に願ってあげるのも、悪くないのかもしれない。
「風船、ちょうだい」
「どうぞ」
今、私の手の中にあるのは、3年分の錆びた過去じゃなくて。
空色に揺れる、未来への切符だから。