時の砂
「桃、大河。長がお呼びよ」
アリスの声を聞いて、桃は今日初めて可愛らしい笑みを浮かべた。
それを見たアリスは片足を引きずりながら桃に駆け寄ると、優しく抱擁した。
「今日もよく頑張ったわね、妹よ」
そう、桃にとってアリスはまるで、血の繋がった姉のように気を許せる存在だった。
少し前の戦でアリスはパートナーを失い、アリス自身も足に重症を追った。
いつ時も最前線で戦っていたアリスは、今はこの暗い穴蔵で仲間の帰りを待つことしかできなくなったのだ。
一体今までに何人死んだのか。
長が拾ってきた子供が何人増えたのか。
毎日目まぐるしく変わるこの場所は、桃にとって暗闇以外の何者でもなかった。
唯一、幼なじみの大河と姉のようなアリスだけが信頼できる相手であり、生きることへの微かな希望をくれるのだ。