時の砂
「ま~た、考えてたんだろ?昔のこと」
大河は桃の傍に座ると、桃の手を握りしめた。
「無理に思い出すことねぇよ。今お前はここにいて、俺がそばにいる。それでいいじゃねぇか」
桃は俯いたまま、小さく頷いた。
お父ちゃん、お母ちゃん。
脳裏に過る黒い影、羽根?
あれは……何だったんだろう?
大河は強引に桃の顔を掴んで目を合わせると、口の端を少し上げて笑った。
「今日怪我したとこ、見せてみろよ」
そう言って、着物の裾を乱暴に捲り上げた。
太ももが露になった桃は、恥ずかしくなって大河の頭を小突く。
「ちょっ、やめてって」
大河はお構いなしに桃の足を掴み、傷に舌をあてた。
「やだってば、奴等が見てる」