時の砂

「ま~た、考えてたんだろ?昔のこと」
大河は桃の傍に座ると、桃の手を握りしめた。

「無理に思い出すことねぇよ。今お前はここにいて、俺がそばにいる。それでいいじゃねぇか」

桃は俯いたまま、小さく頷いた。


お父ちゃん、お母ちゃん。

脳裏に過る黒い影、羽根?

あれは……何だったんだろう?


大河は強引に桃の顔を掴んで目を合わせると、口の端を少し上げて笑った。

「今日怪我したとこ、見せてみろよ」

そう言って、着物の裾を乱暴に捲り上げた。

太ももが露になった桃は、恥ずかしくなって大河の頭を小突く。

「ちょっ、やめてって」

大河はお構いなしに桃の足を掴み、傷に舌をあてた。

「やだってば、奴等が見てる」

< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop