《短編》幼馴染のその後に
そんなのありえない。


タケルは照れた時、鼻の頭を掻くんだ。


無視なんて、したことがない。


タケルのことは、昔からあたしが一番よく知っていたんだ。



だけど、知らなかった。


タケルが、ちゃんと“男”だったってこと。


“結衣が好きだった”ってこと。


もぉタケルは、あたしの知ってる“幼馴染のタケル”なんかじゃなくて。


あたしは…


あたしとタケルは…


あたしと結衣は…


あたしと七海は…


あたし達4人は、これからどうなってしまうんだろう。



数学の授業では、もちろん課題を忘れて怒られて。


抜き打ちの小テストも全然ダメで。


英語に至っては、言ってる意味さえわかんなくて。


掃除当番だったことさえ忘れていた。



本当に、最悪だった。


でも一番最悪なのは、自分自身なんだ。



何もかもを、喜べなくて。


タケルが幼馴染なのこと、初めて“嫌だ”と思った。


結衣が親友なこと、初めて“嫌だ”と思った。


七海が親友なこと、初めて“嫌だ”と思ったんだ。


だけど、そんなことを思っている自分が、一番“嫌だ”って思った。


この気持ちが、何なのかわかんない。



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