《短編》幼馴染のその後に
『あっれ~?
先生居ないじゃん!!』


保健室の扉を開けると、そこに先生は居なくて。


その瞬間、心臓が音を立て始めた。


だってあれから初めて、タケルと二人っきりになるんだもん。



『…ったく、しょうがねぇなぁ。
突き指って何すれば良いんだっけ?』


“薬でも塗る?”とタケルは、あたしを笑わせようとしているらしい。


だけどあたしは、笑うことなんか出来るはずもなく。



「…何もしなくていいから、体育に戻りなよ。」


唇を噛み締め、平然を装うことが精一杯で。


だけどそんなあたしに、タケルは眉をしかめる。



『ハァ?
怪我してんだろ?
何言ってんの?』


「―――ッ!」


その瞬間、抑え切れなくなった。



「“何言ってんの”はそっちでしょ?!
タケルになんか、心配されたくないよ!!」


『―――ッ!』


あたしの荒げる声は、保健室中に響いた。


目を見開いたタケルに何も言われたくなくて、あたしは責めることを止めず。



「大体、何であんなことしたのよ?!
結衣のことが好きなんでしょ?!
タケルがチャラかったなんて、知らなかったよ!」


言い終わり、荒くなった呼吸を整えた。


だけどタケルは、静かに口を開く。



『…なぁ、美咲。』


その瞬間、タケルの瞳は悲しげに見えて。


あたしは何も言えなくなってしまった。


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