《短編》幼馴染のその後に
『…美咲さぁ、何でいっつも勝手に入って来るんだよ?』


「だからあたし、いっつも“勝手に入るよ”って声掛けてから入ってるじゃん。」


あたしの言葉に、彼は相変わらず口元を引き攣らせたまま。


昔は可愛かったのに、今は見る影もないことが悲しい。



「タケル、明日の数学の課題写させてよ。」


『…絶対嫌。』


「…即答ですか。」



彼こと“タケル”は、幼馴染。


ココがあたしの“第二の我が家”である理由は、昔からタケルと一緒に育ったようなもんだからだ。


ついでに言えば、それは現在進行形なわけで。


同じ高校で、ついでに同じクラスでもある。



『てゆーかお前、ちょっとは考えろよ!』


「…何が?」


ベッドに寝転がり足をバタつかせていたあたしに、タケルは顔を覗き込むようにして睨む。


だけどあたしは、言われた意味もわからないまま、その顔を見上げた。



『…ありえねぇ。』


ポツリと呟くその顔は、余計にあたしの頭にハテナマークを増やすことになって。


だけど次に言われた台詞に、耳を疑った。



『…二人っきりで居て、何も起きないと思ってんの?』


瞬間、あたしはブハッと声を上げて笑った。


今更、何を言っているのだろう。


起きるわけがないから、あたしはココに居るのだ。



「…何言っちゃってんの?」


必死で笑いを堪え、タケルを指差して噴き出しそうになる口元を押さえた。


だけど怒った顔のままのタケルは突然、あたしの腕を掴んだ。


< 2 / 31 >

この作品をシェア

pagetop