《短編》幼馴染のその後に
「…結衣のことが聞きたいなら、今聞いてよ…。」


精一杯強がって、あたしは聞き返す。


もぉ熱は下がったはずなのに、心臓が早くて、体中が熱い。



『…ハァ?
違うっつーの!』



…あれ?



『…とにかく、待ってるから!』


それだけ言ったタケルは、友達に呼ばれてあたしに背を向けた。


ひとり取り残されたように、ポカンとしたまま動けない。



そう、あたしは全く気付けなかった。


あたしの知らないところでも、地球が勝手に回っていることを。



だからこの時は、“何て言おう”とか、

“あたしこれから、告白するんだよね?”とかで、頭がイッパイになっていて。


次第に大きくなっていく心臓の音に、底知れぬ不安を感じていた。



教室の空気は、クリスマスムード一色で。


誰かが黒板に書いたツリーの絵を見て、ため息をついた。


振られる覚悟だって、しなくちゃいけなんだ。


結衣に謝る練習だって、しなくちゃいけない。


いやその前に、タケルに何て言おう。


意気込みばかりで、何も考えていなかった。



「ギャー!!」


あたしはこれから、とんでもないことをするんだ。


やっと気付き、教室で大声を上げた。


それを見て笑っている、七海と結衣にも気付かずに。



『…美咲、変なキノコでも食べたの?』


「…いや、あたしのことは放っておいて。」


それだけ言い、呆然と家路に着いた。


進む一歩一歩は、タケルの家にも近づいてるわけで。


刻一刻と、その時は近づいて来るんだ。


< 24 / 31 >

この作品をシェア

pagetop