《短編》幼馴染のその後に
一旦着替えて、タケルの家の前に立った。


打ち鳴らす心臓を落ち着けるように、一度深呼吸をする。


そして覚悟を決め、一本指を突き立てる。



―ピーンポーン…

体中が脈打つように、呼吸が荒い。


待ってる間は、一秒が何十時間のようにも感じられて。



―ガチャ…

『おっ、美咲!
入れよ!』


笑顔のタケルが顔を出した。


どうやら、何十時間に感じたって結局、一秒は一秒のようだ。


もぉ一度深呼吸をし、足を進めた。


まるであたしは、これから決戦に向かうみたい。



タケルは当たり前のように階段に足を進める。


なのであたしも、その後ろに続く。


いつもはココが、“第二の我が家”だと思っていたはずなのに。


今日は何だか、リングに向かう気分だった。



何でタケルは笑顔なんだろう。


もしかしてこれから、結衣と待ち合わせ?


クリスマスを、一緒に過ごすのだろうか?


そんなことを考え出すと、悲しくなってしまって。


振られるってわかってるのに、告白するなんて。


あたしは、本当に大馬鹿なんだ。


泣きそうだった。


でも、泣いちゃダメなんだ。


努めて明るく言わなくちゃ。


登る一段一段の間に、あたしは覚悟を決めたんだ。


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