《短編》幼馴染のその後に
「―――ッ!」


目を見開くあたしに、タケルは掴んだ腕の力を弱めることはなくて。


この格好は思いっきり、押し倒されているみたいで。


その瞬間、やっと事態のヤバさに気付くあたし。



「…ちょっ…タケル…?!」


“ははっ”と笑ってみても、何ら状況が変わることはない。



「―――ッ!」


瞬間、突然重なった唇に驚いて。


呼吸をすることさえも忘れていた。



「…何…やってるの…?」


泳ぐ目を、だけどタケルの瞳が捕らえて。


ただ、このままじゃヤバいと思った。


だけどきっと、声を上げるのはもっとヤバくて。


色んなことが、あたしの頭の中をグルグル回った。



『…こーゆーことされても、文句言えねぇだろ。』


「―――ッ!」



タケルとは、もぉ覚えてない頃から一緒に居て。


手を繋いだこともあるだろうし、もしかしたら一緒にお風呂に入ったこともあるかもしれない。


昔はあたしと同じ身長で、猿みたいだった。


一緒にご飯を食べて、一緒に寝て。


お互いの家だって、“第二の我が家”で。


なのに今目の前に居るタケルは、そんな昔の姿とは全然違ってて。


ちゃんと“男”なんだって、この時初めて気付いた。


あたしより力が強くて、体も大きくて。


こんなのは、あたしの知ってるタケルじゃない。



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