《短編》幼馴染のその後に
「…嘘…でしょ…?」


目を見開いた。


だってタケルは昨日、あたしにキスをしたのに。


なのに何で、次の日には結衣と付き合うことになってるのかがわからない。


しかも結衣も結衣で、“タケルを好き”なんてこと、聞いたこともなかった。


あたしには、何が起こってるのかなんてまるでわからなくて。



『嘘みたいだけど、ホントなの。』



だけどどうやら、現実らしい。


驚き、だけど二人のことを祝福している七海もまた、あたしにはよくわからない。


だってあたし達はみんな、ずっと子供の頃から一緒だった。


それこそ“男だから”とか“女だから”とか、考えたことがなかったのに。



「…結衣は…タケルのこと好き?」


『エヘヘッ♪』


そんな幸せそうな顔、見ることが出来なかった。


何で親友のおめでたい話を、喜ぶことが出来ないんだろう。


何で幼馴染に彼女が出来たこと、喜べないんだろう。


そんな自分が、すごく嫌で。


そんなあたしに、七海がとどめを刺す。



『…何で美咲、喜んであげないの?』


「―――ッ!」


まさにこの言葉は、あたしに突き刺さって。



「…おめ…でとう…。」


やっと、これだけ言えた。



「てゆーか、ゴメン!!
あたし今日、女の子の日でさぁ。
お腹痛いし、ちょっとトイレ!!」


思いつくままに言葉を並べ、その場から逃げた。


胸が締め付けられて、このままじゃ泣き出してしまいそうで。


だけど何で、自分がこんな風なのかわかんなくて。



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