春風に流される
一年の頃からずっとクラスが同じで、腐れ縁のような関係。


牧村の容姿は華奢で綺麗なのに、言動や行動がまるで男だ。


「お前、アキちゃんに振られたんだって?」


「こんな所で言う話じゃないだろーがっ!?」


「だったら、どこで言えばいい?」


正に売り言葉に買い言葉。


何か言えば、憎たらしさ倍増で返ってくる。


「ほらほら、アキちゃんにち、か、づ、い、て、るよ!!」


わざと一語一句を離して言いながら、俺の背中に人差し指でちょんちょんと押してくる。


牧村に言われて、前を向くと視界に入った、元彼女(カノ)のアキ。


あと3メートル…、

あと1メートル…、

ついに30センチ、目の前。


ついこないだ、喧嘩別れしたアキに今更、どんな顔で会えば良い?


「サトちゃ…」


通りすがりに目が合って、アキが、か細く俺を呼ぶ声。


聞こえてる…、拾えない位に小さかった訳じゃない。


でも、聞こえない振りをして、わざとらしく牧村と会話をした。


「お前…今、完全シカトしただろ?」
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