きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜
しばし無言のにらみ合いが続いたが・・・


「新見〜!」


突然、芹沢さんが叫んだ。


「何でしょうか?芹沢局長。」


1人の男の人が入ってきた。


この人が新見さんなのかな?


「興醒めだ。外に出る。供をせい。」


パシンと鉄扇を叩きながら芹沢さんが立ち上がった。


「芹沢局長、島原へ行かれるにはまだ早すぎではございませんか?」


部屋を出ようとした芹沢さんの背中へ土方さんが声をかけた。


「島原ではなく大和屋へ行ってくる。なに、京の町のために働いている我ら浪士組にちょいと感謝してもらうだけさ。」


「・・・そうですか。」


こちらも見ずに言いながら出て行った芹沢さんの背中に向かって土方さんは言った。


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