きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜
「とりあえず、その辺の書類を整理してくれ。」


土方さんは積み上がった書類の山を指差しながら言った。


「分かりました。それにしても相変わらずすごい量ですね。」


私は書類の山を目の前にして思わずため息とともに言ってしまった。


「あ〜。たぶん、俺宛ての恋文も交じってるだろうから、恋文はその箱に入れといてくれ。」


土方さんはすごくモテる。


恋文も山のように送られてくる。


きっと私なんて相手にされないんだろうなぁ。


だって土方さんの周りにいる女の人は皆、綺麗で魅力的な人ばっかりだ。


そんなことを考えていたら胸の当たりがズキンと痛んだ。


「はい・・・」


私は落ち込む気分を土方さんに悟られないように返事をした。























「土方さん〜!」


しばらく書類の整理をしていると、遠くから土方さんを呼ぶ声と共に、誰かが走って来る足音がした。


「土方さん、入るぜ。芹沢局長が。」


そう言いながら土方さんの部屋の前に現れたのは永倉さんだった。



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