きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜
「次は八木邸や。ここはな、新撰組の前の壬生浪士組の時からの一番最初の屯所やったとこやねんで。」


「ふ〜ん・・・」


涼が説明してくれてるけど、私はそれどころじゃなかった。




『華・・・』


そう・・・

さっきから誰かに呼ばれてる・・・


私の名前は沙夜、華じゃない。


でも、この声は私を呼んでるんだ。


不意に頭が痛くなる。



「痛っ!」


思わず、声に出してしまった。


「ちょっと・・・ほんまに大丈夫なん?」



馨が心配してくれてる。

涼も心配して顔を覗き込んで私の顔色を伺ってる。



「ん。大丈夫。行こう。」


私はにっこり笑って答える。


「うちは行かなあかん・・・」



私は八木邸に行かなきゃいけない。


何故かこの時そう思った・・・


< 22 / 187 >

この作品をシェア

pagetop