【シリーズ】~出会った時は笑顔で~


「翔ちゃんは…今彼女とかいる?
……って、あたしが聞ける立場じゃないよね」


沙南はそう言うと悲しそうに笑った。


「…いないよ。俺には沙南だけだから」


俺は気付けば自分の想いを口にしていた。

“しまった”
と思ったがもう遅い。

沙南を見るとびっくりしながらも、目からは涙を流していた。


「あっ…ごめんっ…何泣いてんだろ……ごめんね」


沙南は必死に涙を拭っていた。

そんな沙南を俺は抱きしめたくなった。

けど必死に我慢した。


俺はもう沙南の彼氏じゃないから。

俺が沙南を抱きしめる権利なんてないんだ。


「彼氏は…元気?」


俺は話をそらすように彼氏の話を聞いた。


「…別れちゃったんだ。
あの後すぐ振られちゃった。
あたしね…都合のいい女だったんだって」

「そう…なんだ…」


沙南があまりにも明るく言うから、俺は何も言えなかった。




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