泣いた赤色、うたかたの青
少年はまたぶっきらぼうに、

「しかたがないなあ」

と、言いました。


本当はちょっぴり嬉しくて、どきどきしておりました。


「おれはコウタ」

少年は自分の名前を女の子に教えてやりました。

それから、

「おまえの名前は?」

と女の子にも名前をたずねました。


すると女の子は首をかしげます。

「わからない」


少年はびっくりしてしまいました。

自分の名前なのに、わからないとはどういうことでしょう。


「覚えていないの」

少年が見つめていますと、女の子はそんなことを言いました。

「あたし、この村に来る前の記憶がないんだもん」
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