泣いた赤色、うたかたの青
女の子は、
村はずれの深い深い淵のほとりの、龍神様のお社のそばに倒れていたのを村人が見つけたのだそうです。
どこから来たのかと大人がたずねても、わからない、と繰り返すばかり。
それで大人たちは、この子は龍神様の淵の底から来た魔物ではないかと考えたのでした。
少女の不思議な青い瞳や髪の毛は、なるほど淵の色をそのままうつしとったようで、水の化身のようでありました。
さて、少年は困りました。
名前がないと不便です。
「おしょうさまは、あたしのことをザンって呼んでいたけれど、あんまり好きな名前じゃあない」
女の子は口をとがらせて言いました。
少年も、確かにこの子にはもっと綺麗な名前がいいなと思いました。
女の子はまたいたずらっぽい顔になって、少年を見つめました。
「コウタが名前をつけてよ」
誰かに名前をつけたことなんてありません。
これは一大事だぞと思いながら、少年は一生懸命に考えて
「────」
思いついた名前を口にしました。
「すてき」
女の子はたいそう気に入った様子でにっこりしました。
少年も嬉しくなって、にっこりしました。
誰かとこうして笑い合うのは、おじいさんが死んでしまってから初めてのことでした。
村はずれの深い深い淵のほとりの、龍神様のお社のそばに倒れていたのを村人が見つけたのだそうです。
どこから来たのかと大人がたずねても、わからない、と繰り返すばかり。
それで大人たちは、この子は龍神様の淵の底から来た魔物ではないかと考えたのでした。
少女の不思議な青い瞳や髪の毛は、なるほど淵の色をそのままうつしとったようで、水の化身のようでありました。
さて、少年は困りました。
名前がないと不便です。
「おしょうさまは、あたしのことをザンって呼んでいたけれど、あんまり好きな名前じゃあない」
女の子は口をとがらせて言いました。
少年も、確かにこの子にはもっと綺麗な名前がいいなと思いました。
女の子はまたいたずらっぽい顔になって、少年を見つめました。
「コウタが名前をつけてよ」
誰かに名前をつけたことなんてありません。
これは一大事だぞと思いながら、少年は一生懸命に考えて
「────」
思いついた名前を口にしました。
「すてき」
女の子はたいそう気に入った様子でにっこりしました。
少年も嬉しくなって、にっこりしました。
誰かとこうして笑い合うのは、おじいさんが死んでしまってから初めてのことでした。