泣いた赤色、うたかたの青
「あたしはコウタのそばからいなくなったりしないから、大丈夫」


彼女は晴れた日の水面のようにきらきらと笑って、


「それに、知ってる? 人魚の髪は赤いのよ」

と言いました。


「だからきっと、あたしは人魚なんかじゃない」


少年はわからないぞと思いました。

世の中には、青い髪の毛の人魚だっているのかもしれません。

あの青い淵の底を通って海からやってくる間に、赤い髪を淵の水が青く染めてしまったのかもしれません。
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