泣いた赤色、うたかたの青
「遠い国に伝わる人魚のお話を知っている?」


青い髪の毛の少女は、白くて細い手で、そっと少年の手を包み込みました。


「王子様に振り向いてもらえなかった人魚のお姫様はね、泡になって消えてしまうんだって」


それはやっぱりひんやりした、冷たい魚のような手で──




その手が

鉄砲の銃口を彼女の小さな胸に向けて、

少年の指を引き金にかけて、




パァン、という火薬の弾ける大きな音が、小さな山間の村に響き渡りました。
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