それなら君を連れて逝く。
こぼれ落ちる雫を透き通るような白い頬に受け、拭おうともせずに言葉を続ける。


「あの歪みに身を投ると、貴方と一緒に生きれると思ったの。ふふっ…馬鹿みたい?私、初めて呪ったわ…」


神に使える君に、そんな事などあってはならない。


「貴方がいる場所が、こんなにも遠い場所で…貴方と共に生きられないのなら、この命など朽ちてしまえと…そう呪ったの。」


一呼吸置いて、そしてゆっくりと彼女は言った。



「私、貴方を殺すかも。」


綺麗な君が吐き出した言葉が、あまりに残酷で…

俺はその細く白い首に手を這わせて言った。


「…それなら君を連れて逝く。」

「うん、連れてって。」


冷たく零した言葉にも、いつもの笑顔で答えた。それと同時に俺に向かって伸ばされた両腕が、こんなにも愛おしい。

震える指で君の前髪を払う。陶器の様な額に、それでも想いを紡げない唇を押し付けた。

想いが伝わるようにと…

触れる事すら許されない恋は、触れてしまえば手放すことが出来なくなった。



「大好きよ、ノワール。」


二人で、生まれ変わろう?

二人でまた始めよう?

大丈夫よ、私は貴方が大好きだから。

姿形が変わっても、見つけ出せる。



きっとまた、出逢えるわ。

君の声を聞きながら、俺は‥‥初めて祈った。

君が逝く場所が、どこよりも美しい場所であるようにと…




神の声か、魔王の声か。

聞こえた気がした…


もう、そんなものどうでもよかった。


そして、二人で手を繋ぎ…
世界に飛び出した。


二人で飛ぶには邪魔な羽根はしまったまま。
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