イジワルな俺様の秘密ライフ
「呼んで……るね……」
ナツの顔がひきつっているけど、多分私の顔のほうがひきつっているに違いない。
「ごめん、これはフォローしきれないわ」
ナツー!?
とん、と抱き付いていた私を押し離し、御愁傷様と呟いたナツ。
「ちょ……ナツぅぅう~」
いまだ諦めきれない私の後ろに、一筋の影が近付く。
固唾を飲んで見守るナツとギャラリーの雰囲気をひしひしと感じながら、恐る恐る後ろを振り返る。
にこやか爽やかな王子様がいた。
「こんにちは」
何を言われるのかと身構えていたら、ただの挨拶で少し肩透かしをくらった気になった。
「こ、こんにちは……」
「帰るとこ?」
「は、はい……」
なんだ?世間話に来たのか?
そう思って肩の力を抜いたとき、その発言が放たれた。
「じゃあ、」
口角の上がった口元が、不穏な空気をまとう。
イジワルな笑みという形容がよく似合うその笑みに出された言葉は。
「一緒に帰ろうか」