イジワルな俺様の秘密ライフ
聞き覚えのあるその声は
「彼岸花の可憐……」
危うくケバ子と言いかけた。
そんな私の呟きに、彼女は小さく舌打ちをした。
「なんかあんたに“彼岸花”って異名をつけられると変な感じ。
それより……」
ケバ子はチラと左右に目を走らせると、誰も自分たちを見てないことを確かめ、
こっそりと私だけに聞こえるように耳打ちした。
「今朝海翔様と言い争ってたやつ。
さっき、海翔様のとこにいたけど、あんた関連じゃない?
あのナツって女もいたし」
「大地とナツが…?」
「男の名前言われてもわかんないけど」
ぽりぽりと頬を掻いた仕草には困惑が浮かんでいる。
「今朝のっていったら大地じゃん!」
「だから知らないって!
名前なんかどーだっていいし!!
それより行かなくていーの?」
「う……ん。
だって二人とも私には何も言わずに行っちゃったし……
私が行っても何も出来ることないし……
むしろ邪魔かもだし……」
今朝の大地と海翔様のやりとりを思い出すと、私のこととはいえ、口を挟む余裕なんてないように感じた。