イジワルな俺様の秘密ライフ
聞きたい。
聞きたくない。
どちらの感情も私の中には存在していて、
耳をそばだてたい気持ちと、
耳を塞ぎたい気持ちが混在していた。
でも海翔様の溜め息で片方へと揺らぎ、傾く。
聞くのが怖い。
知らなかったフリをしようと離れかけたときにナツが言葉を続け、手が止まる。
「あるよ。あたしたちアヤの友達だもの。
友達が傷付くのを黙ってみてられない。
好きなら周りにハッキリ言って守ってあげて。
違うならヘンに構わないで。
海翔様の親衛隊がウザったいのは、海翔様が一番よく知ってるでしょ?
中途半端に構わないで」
檄を飛ばすかのように一気に言い放ったナツは、海翔様に一歩も譲らない気概が背に溢れていた。
その背中に私の視線は釘付けになる。
「友達……ね」
厄介だな、と呟いた海翔様が体を傾け、扉のところで立ち竦む私を見付けた。
「……アヤさん」
海翔様の呟きに、勢いよく大地とナツが振り返った。
二人は気まずそうな顔をして、私から視線をそらす。
私こそ今すぐ逃げ出したいと思った。