イジワルな俺様の秘密ライフ
私の姿を認めた瞬間、かすかに眉をひそめる仕草をした。
走っていた私は、その体躯が見えた頃にスピードを落とし、あと数メートルというところでついには足を止めた。
辺りは暗く、寮の明かりでぼんやりと表情が見えるだけ。
「遅い」
ぶすっとした声に、ムクムクと負けん気が顔を出しそうになる。
「心配すんだろうが」
視線をそらしてガシガシと頭を掻いた海翔さまに、私は言葉を失う。
心配……?
よほど不思議そうな顔をしたのだろう。
チラリと私の様子を窺うように視線を移した海翔さまは、大きく溜め息をついて言った。
「教室から突然見えなくなるし。
人混みをかき分けて廊下に出たらもういないし。
お前の教室に行ってもいないし。
寮にも戻ってないし」
一つ一つ列挙しながら、一歩一歩私に近付いてくる。
「あんまフラフラすんな」
その言葉と共に、ぎゅっと抱き締められる感触がした。