イジワルな俺様の秘密ライフ
正確には、海翔は後ろに数歩下がった。
間に大地が割り込んで、私に背中を向けている。
庇うようなその仕草に、私はただ突っ立っているしか出来なかった。
軽い舌打ちと、
「邪魔」
と言う海翔の声が聞こえる。
「わざとッスから」
空気に剣呑さが孕み、
一触即発の危機。
睨み合っている様子がひしひしと伝わってくる。
どうしよう。
薄情にも思ったのは、この場をどう諌めようかということではなく、
この場をどうやって切り抜けようか──つまり、どうにかして逃げられないかしらん、ということだった。
しかしそんな不道徳なことが許されるはずもなく。
神様はちゃんと、そんなことを考えていた私に、天罰を用意していた。
ふいに私の背後から伸びてきたのは、無数の手。
「むぐっ……」
一瞬にして口が押さえられ、
あっと思った時には既に担がれていた。