イジワルな俺様の秘密ライフ
ガラッと勢い良く扉が開いた瞬間に、大音声が響き渡る。
「平松 修造と~ぉッ、申します~。
本日は~お日柄も良く~
桜野 亜弥様に至っては~」
その声は独特のイントネーションを醸し出しており、
保健室の窓ガラスがビリビリと共鳴をおこした。
私は反射的にぎゅっと目をつむり、慌てて耳をしっかりと塞いだけど、
そんなんじゃ焼け石に水。
隙間からビンビンと聞こえてくる声に、頭がガンガンする。
しかし相手は構うことなく口上を並べたて、一通り何か言ってた。
何を言ったのかは、あまりに大きな音過ぎて全くわからなかったけど。
ようやく騒音がおさまり、私は恐る恐る目を開ける。
視界に入ったのは、今の今まで大声を上げていたであろう男子生徒。
……なのだが。
「…………」
私は無言でポカンと立ち尽くした。
そこに立っていたのは、明らかに時代錯誤な『をのこ』。
きっちりとした着物を着込み、
閉じた扇子をピシリとこちらに向け、
そう、言うなれば……
「狂言師……?」