イジワルな俺様の秘密ライフ
「アヤさん。俺と付き合う振り、しませんか」
ためらうことなく、すっぱりと言い切ったシュウさん。
清々しい雰囲気のなかでの言葉は、するりと私のなかへ入ってきて、
脳が反応を出そうとする前に、
私はうっかり頷きかける。
いやいやいや、頷いちゃダメでしょ!!
すんでのところで首が縦に動くのを阻止した刹那、
付け足すかのように言葉を並べながら、シュウさんは微笑む。
「いい案だと思うんですけど。
澤崎くんと付き合ってる限り、こんなことがずっと続くんですよ?
俺と付き合う振りをすれば、この行列は瞬く間になくなると思います。
どうです?」
確かに、と思った。
シュウさんの言う通りな気がする。
だけど。
「ごめんなさい」
深々と頭を下げた私に、困ったようなシュウさんの声が聞こえた。
「……そうですか」
その言葉をきいて、捲し立てるように口早に言った。
「確かにいい案だと思いますし、こんなあたしに勿体ない提案だと思います。
だけど、
例え“振り”であっても、嘘をつきたくないんです」
海翔に。
自分の気持ちに。
嘘をつきたくない──