イジワルな俺様の秘密ライフ


冷蔵庫を開けると、ひんやりとした冷気が頬を撫でた。


火照った顔にちょうどいい。



流れてくる冷気を感じながら、冷蔵庫の中段あたりのケーキを見つけた。



お皿にのってラップがかけられているそれは、

ザッハトルテだった。



あの日、ホテルのディナーで食べたケーキ。



つい先日のこととはいえ、覚えていてくれたことが素直に嬉しい。



甘いものなんて興味なさそうで、私が何を食べたかなんてろくに見てなかった気がしたのに。



数あるものの中から選んだのに、覚えててくれたんだ──



そっとお皿を持ち上げる。


触れたところがキリリと冷たくて、

体を震わせた。


< 219 / 290 >

この作品をシェア

pagetop