イジワルな俺様の秘密ライフ
「あ、それはこっち」
ぼんやりと手を止めた私が摘まんでいたピースを、海翔がひょいと取ってパチリとはめた。
いつの間にかだいぶ時間が経っていたみたいで、私はあわててパズルの進捗状況を見る。
「うそ……」
私が意識を漂わせている間に、パズルは海翔の手によってみるみるうちに嵌め込まれていた。
それにも驚いたのだが、それ以上に驚いたのは、そのパズルの模様だった。
苦戦した背景は、見覚えのある学校の一教室で、
中央に人物の顔が映っていた。
その人物はこちらを向いてはいなくて、
視線は外れている。
その先に誰かがいるのか、
何かがあるのかはわからないけど、
とても優しい顔をしていた。
隠し撮りされたみたいなスナップを、そのままパズルに移したような、そんな感じで。
こんな表情、私は見たことがなかった。
毎日毎日、鏡で見ている顔なのに。
映ってたのは、私の顔、だった──
「あたし……?」
「俺はすぐにわかったけどな」
それが負け惜しみでないことは、その顔と声でわかった。
「いつも、みてる顔だから」