イジワルな俺様の秘密ライフ
初めて私から背を向けた。
エレベーターに向かおうとする私を引き止めるかのように、
海翔様の腕が伸びる。
ぐいと引き寄せられ、私の背中全体で海翔様のぬくもりを感じていた。
「行くな」
告げられた言葉は私に向けてのもの。
その熱っぽさに涙がにじんだ。
なんの涙か、自分でもわからない。
引き止められたのが嬉しいのか、
海翔様の声が切ないからなのか、
偽りと思ってなのか、
羞恥に感じてか。
でも海翔様の手を振り払ってまで、エレベーターに向かうことが出来ないと思ったのだけは、
それだけは確かだった。
なのに。
「まだ選んでない」
……はい!?