イジワルな俺様の秘密ライフ
臨戦態勢だったケバ子は、その海翔様のたった一言で矛を納めた。
残されたナツも、ちょっと気を削がれた顔をしたものの。
「まぁ、アヤに何もなくて良かった」
と微笑みを私に向けて、戦闘はひとまず回避された。
まだピリピリとした空気はあるものの、張り詰めてはいない。
よ、良かったぁ……
ぼーぜんとした私に向かって、海翔様がイラついたように、
私だけに聞こえるような、小さな舌打ちをする。
でも、ナツのピンチを救ってくれたのは確かだから。
「ありがと……」
と小さな声で囁いた。
ふい、と顔を背けられて、ズキンと心が痛む。
なんだよ、せっかく謝ったのに。
海翔様は女同士のケンカという楽しみを奪われて怒っているのか、耳まで真っ赤にしている。
呟いた言葉がかすかに聞こえたのは、きっと近くにいた私だけ。
「俺以外のヤツのことで、あんな顔、すんじゃねぇ」
へ?
あんな顔??
「俺以外のヤツのことで、あんな泣きそうな顔すんな」