イジワルな俺様の秘密ライフ


床を静かに移動する音が聞こえた。



意外に近いその音に、ドキリとして座ったまま振り返る。



目の前に、制服に身を包んだ脚が見えた。



恐る恐る顔を上げると、海翔様の笑顔と目があった。



笑顔というと暖かさを感じるものだと思うが、

海翔様のその微笑みには、何故か体内全ての熱が全て奪われたかのような錯覚を引き起こした。



つぅ、と背中を伝う、冷たい雫。



なんて言い訳をしようかと考えて、

悪いことなんて何ひとつしてないのに『謝らなきゃ』と思わせる海翔様の冷笑は、

こんなときだというのに、とても美しいと思ってしまった。



すっと膝を折り、傍目には王子様の微笑に見える笑顔で、

私の目線までかがみこむ。



目の高さが合わさると余計に、海翔様から目がはなせなくて。



私はさっきまでの思考はどこへやら、

無言で海翔様を見つめていた。



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