黒の記憶
1.ミス
あなたと出会ったことは
あたしの人生、最大のミス。

-

高校卒業後。
「中嶋美波(なかじま・みなみ)」宛てに届く茶封筒には皆、『不採用』と書かれた紙が入っていた。
面接に行ってもことごとく『不採用』。
このままではいけない。
とりあえず、アルバイトをしようと、あるコンビニへ応募した。

店長の態度は最低、最悪。
初対面の人に何故こんなことを言われなきゃいけないのか。

容姿のこと。
あたしは背が高くて女ながら、173センチある。
コンプレックスだったけど、「背高いね」と昔から言われ続けていれば慣れて来た。
でも面接で、店長とは言え初対面のおじさんに「でっけぇなぁ」と言われることになるとは。
その言い方も、あたしをイライラさせるような馴れ馴れしさ。
あたしは馴れ馴れしい人は性別、年齢問わず大嫌い。

あと、あたしは天パ。
左右でウェーブが違うから、それを指摘された。

「天然パーマなので、こうなってしまうんです」

二つ目のコンプレックスを突かれた。
嫌だと思っても面接だからと我慢して何でも素直に受け答えする。
やっと髪の話が終わった、と思いきや「しかしその髪なんだろ、おっかしいよなぁ」。

あたしは、ボロボロ。

他にも「色白すぎて気持ち悪い」とか、「ほそぼそ喋って聞きにくいからはっきりしろよ」とか。
イライラと泣きたい気持ちがごちゃごちゃして、上手く交わすことも「面接」としての受け答えも出来なくなる。
もうこの人の声を聞きたくない。
でも逃げ出すことが出来なかった。
ああ、また何か言ってる。

「何だぁ、お前?チッ…首締めてやろうか」

俯き、言葉も出ずにいたあたしに言った、信じられない言葉。
あたしはここまで言われても何も言い返せず、家まで泣いて帰った。
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