黒の扉【短編集】
数分後。

女は、彼女のマンションへと入って行った。

僕が、マンションの南側に移動して待っていると、最上階の部屋の窓に女の姿が確認出来た。

2人は椅子に座り、呑気に紅茶なんか飲んでいる。

会話までは聞き取れないが、結構冷静に話をしている感じだ。


さっさと殺っちまえばいいのに…


はやる気持ちを押さえながら、二人のやり取りを見守っていると、突然女が窓から姿を消した。


数秒で戻った女の手には、果物ナイフ。

恐怖に叫びながら、逃げる彼女。


女がナイフを振り下ろす度に、ナイフはキラリと妖しく光る。

腕にかすり傷を負いながらも、彼女は部屋を逃げ惑う。


何度か、女が握るナイフが、空を切った後、力一杯振りかざしたソレが、彼女の細い首に命中した。

彼女の動きが止まる。

女がナイフを抜くと同時に、辺りは紅に染まった。

白い壁も

白い絨毯も

白いソファも


白で統一された部屋が紅に染まる。




とても綺麗だった。


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