黒の扉【短編集】
終わったな…


そう思った瞬間。

女は再び、ナイフを振りかざした。

既に息絶えている彼女に、何度も何度も突き立てる。



あーぁ。

そこまでやる事無いのになぁ。
そんなに穴だらけにしたら、美しく無いじゃないか。



ふいに、女の動きが止まった。
自分のしている事に気付いたのだろう。


女は、ガクガクと震えだし、後ろに下がった。
辺りを見回し、窓に近付く。



…自殺?


そう思いながら、眺めていると、窓を開けた女と目が合った。


「―――っ!!」


女は僕を見て、目を丸くした。そんな女を見て、僕は吹き出す。


『何?ひょっとして、僕が怖いの?他人から見たら、僕の存在より、君の格好の方が、よっぽど恐怖だよね。』


「……死神?」


女が震える声で言った。


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