光る道
「相沢さーん… 香田さんが、体拭いてくれないんですけどー。入院して三日間、そのままですよ!」




若いスタッフが、声をかけてきた。



今日は私じゃなく、彼女の担当。



まだ少しフラついてる薫には、シャワーの許可がおりず、看護師が体を拭く手伝いをしていた。



それを入院以来、拒否してるらしい。




「わかった。私が行ってくるよ。」




温かいタオルを持ち、ノックをして彼の病室へ入る。



「失礼します。香田さん。体を拭くタオルをお持ちしました。点滴が邪魔になるので、お手伝いしますね。」




あくまで、仕事モードで話す。




「いいよ… 」



薫が反対を向いて、つぶやく。




「汗かいてるでしょ? 臭いと嫌われるよ。 …ひょっとして恥ずかしいの?」



私が、からかうように言う。




「んなわけないだろ! 体なんか自分で拭けるから、置いといて。」



図星だったのか、彼がムキになって言う。




「だからー。点滴があると着替えにくいから、手伝うんだって。」




ダダをこねる子供をあやすみたいに、私が言った。


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