光る道
「そうですか…
 だから夕希が相手の方の名前を、すぐに言わなかったのね…」





やっと状況を把握し始めた母が、笑ってくれた。





「今日はもう遅いし、私は帰ります。またゆっくり会いましょう。
…えっと… 何て呼べばいいのかしら…」




母がとまどい気味に、薫を見る。




「何でもいいですよ! でも、本名で呼んでもらった方が嬉しいです!」




彼が笑顔で言うと、




「じゃあ、薫くん!」



と、すぐに母が返す。




何で名前?・・




ニコニコ笑う母を見て、ため息をつく。





やっぱり、薫のお母さんと似てる…





帰りぎわ、薫が『自分が送っていく』と言い張った。でも、




「病み上がりなんだから、無理しちゃダメよ。今日は、ゆっくりしなきゃ。」




という母の言葉で、私が送る事に同意してくれた。





母と玄関へ向かう時、薫が私をソッと引っ張った。




「今日も実家に泊まる?」


耳元で、彼が小さく話す。




「ううん。今日から、こっちに泊まるから。」




そう言うと、薫はニッコリと笑った。



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