光る道
水谷と呼ばれた若い男の人は、あせった様子で



「お願いします!! もう本番なんで、すぐ終わりますから!」



そう言って、私の腕をひっぱり、連れていく。



「ちょっ! 待ってください! こういう事は上司に確認しないと…」



そう言った視線の先には…

たしか今日の当直の師長…


「師長! 何してるんですか?!」



「あら、あなたも出るの? たまたま通りかかったら、頼まれたのー。」



何でこんなに上機嫌なんだ…



「TVに出たりしていいんですか?」



「いいんじゃない? 上からも、できる範囲で協力してくれって言ってきてるし。 いつ放送かしら。ビデオとらなきゃ♪」



まったく・・・



そうこうしてるうちに本番と声がかかる。



私たちは、薫ともう一人の役者さんが話してる後ろを、通りすぎるだけだった。



こんなエキストラ、必要なのかな… 




OKと言われ、早々に職場へ戻った。




最後まで、薫と目が合うことはなかった。



気付かなかったかな・・・


まぁ… いいけど…

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