光る道
私の願いが通じたのか、赤ちゃんは元気に泣いてくれた。



下半身麻酔で意識のあるお母さんは、わが子を見て涙を流した。



私もホッとした…    



赤ちゃんを保育器に入れ、先に病棟に戻る。




もうすぐ消灯時間で、面会者も少なく、フロアは静かだった。



エレベーターを降りて、保育器を押す。




「あっ! 赤ちゃん!」



という声が聞こえたかと思うと、数人の人に取り囲まれて、一気に騒がしくなってしまった。



さっき見てた、ドラマの人達だった。



「かわいー!」


「ちっちゃいねー!」


「うわっ! 元気だなー。」


みんな目をキラキラさせて見てる。



その声に誘われるように、ギャラリーはどんどん増えていく。





みんなが赤ちゃんを見て、幸せそうな表情をしてるのは、私も嫌いじゃない。



でもそろそろ行かないと…


そう思って全体を見渡すと、薫も少し後ろから見てた。



その目は、私が今まで見たことのないくらい、とびきり優しい目だった…



そして私の視線に気付いた彼は、赤ちゃんを見てた時と同じ、優しい目で私に笑ってくれた…


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