加納欄の警察手帳 シリーズ24
加納欄の警察手帳 シリーズ24
あたしは、苫利先輩と聞き込みに行き、その報告をするために、南署へ帰って来た所だった。

「何をやっとるんだ!バカモンッ!!」

部署に入った途端に聞こえた課長の怒鳴り声だった。

あたしは、一瞬立ち止まり、課長のデスクを見た。

そこには、怒り心頭の課長と、頭を垂れ、肩を落としている、鮎川さんの姿があった。

「どうしたんですか?」

あたしは、報告する前に、コーヒーを飲みに行った。

「拳銃を無くしたらしい」

高遠先輩が、コーヒーを手渡してくれた。

「ありがとうございます……拳銃って、鮎川さんの?アチッ(>_<)」

舌を火傷して、フーフーと、息を吹き掛けた。

「いつの話しです?」

「さっきらしい」

さっきって、今、大山先輩が張り詰めてる銀行強盗事件の時?

昨日の午後に発生した銀行強盗は、人質を解放しないまま日にちをまたぎ、今に至る。

大山先輩が、全面に指揮をしていた。

あたしは、大山先輩の指示のもと、周辺の聞き込みをし、情報を南署に持ち帰ってきた所に、課長の怒鳴り声を聞いたのである。

「そりゃあ、マズイ話しですよねぇ」

あたしは、コーヒーをそっと飲んだ。

「まぁな。そっちはどおだったんだよ」

「銀行の前の交差点に防犯カメラが付いていて、車のナンバーから、前歴ヒットです。名前、林田康夫。年齢、40歳。性別、男。身長、173cm。元、保住組の構成員です。半年前に刑務所から出所してます」

「林田ね」

「記憶あるんですか?」

「楽しい記憶じゃねぇがな。仁に教えてやりゃ喜ぶぜ」

「もぅ言ってあります。だから、こっちに戻ってきたんですよ。園田さんもいたから、私の仕事ない感じだったし」

「たまには息抜きしろよ」

「……そうですね」

こんな会話をしていても、課長の怒鳴り声は、治まっていなかった。


………………。


苫利先輩も、報告したくても入っていけないようで、困惑気味だった。

「欄、明日非番だろ?」

高遠先輩に聞かれ、我に反った。

「え?あ、そうですよ」

「報告書整理しとかないと、帰れなくなるぜ」

「……そうですね。やっときます」

あたしの返事は、空返事だった。


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