加納欄の警察手帳 シリーズ24
あたしはもう一度警察手帳を見せた。

「捜査のご協力をお願いします。駅の反対側で起きた事件の容疑者が、こちらのお店に入ったとの情報が入りました。店内を確認したいので、男子トイレを拝見させて頂きたいんですけど」

「……はい、わかりました。どうぞ、こちらです」

店長は、納得したのかしてないのか、少しうさん臭そうにあたしを下から上へ眺め、トイレへ案内してくれた。

思ったほど広くないトイレは、5秒もあれば、確認はできた。

「ありがとうございます。あの、店内の閉店時間を後5分伸ばしていただけませんか?」

「それは……」

「店内の確認が終わり次第すぐに帰りますから。5分だけ」

「はぁ……じゃあ、早めに……」

店長は、自分の店が襲われそうな事に、まだ自覚が足りないようだった。

近くのお店が襲撃されても、まさか自分のお店がやられるとは、実際に考えてる人は少ないのだ。


言ってやろうか(-.-)


もしかしたら、今日にでも襲撃されるかもよって。


「常連のお客さんとバイトの子達を避難させること出来ますか?」

「え?犯人いるんですか?」

「わかりません。これから確認します。でも、最悪犯人がいた時に、人質にされない為にも、少しでも安全を確保しておきたいんです。店長さんも、皆さんと一緒に出て下さい。私が、店長さんの所へ行くまでは、絶対にお店に戻って来ないで下さい。今いるお客さん、皆さん常連さんですか?」

店長は、フロアーを見ると、頷いた。

「見るかぎりそうですね」

と、言った。

「では、1分以内に誘導をお願いします」

あたしは、店長の返事も待たずに、歩きだした。

ずぅ〜っと、歩き進めると、パチンコ台が置いてある最後の壁に、怪しい男性が、後ろ向きにチュウゴシの体制でへばり付いていた。

あたしは、その男性の所へ素早く移動すると。

「何やってるんですか?」

と聞いた。

男性は、驚いて振り向くと。

「欄君!?どおしてここに?!」

と、小声で話した。

男性は、鮎川さんだった。

あたしと鮎川さんは、その場でしゃがみ込んだ。

「私?私は、パチンコしに来たんですよ。鮎川さんこそ何してるんですか?」

と聞いた。

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