加納欄の警察手帳 シリーズ24
「……希歩がな、帰って来なかった日があって、その事を追求したんだ」

「そりゃあ、するだろぉ。希歩ちゃん、まだ高校生だろ?」

「あぁ、今度3年になる。そしたら、”娘にも刑事みたいな態度とらないでよ。いっつも家にいないくせに、こういう時ばっかり親面しないで。”って、言われたんだ」

「どうしたんだい?希歩ちゃん。学校で何かあったのかい?」

「わからん。ただ、希歩が何か悩んでいるとしたら力になりたいが、この仕事をしている限り、家庭はどうしても二の次になってしまう」


娘さんが帰って来なかったんだ……。


「それは仕方ないだろう。それは、奥さんがいた時からそうだったじゃないか。希歩ちゃんだって、わかってくれてた事だろう?」

「……そうだな」

「……その事を気にしてたのか?」

「……ああ……いや……」

「どうしたんだよ?」

「一昨日また帰って来なかったんだ……探したんだ。探したんだけど、希歩の友達を知らないんだ。連絡先もわからない。どこを探せばいいのかさえ、わからないんだ。なぁ、吉井さん、親にも言えない、友達って、どういう友達なんだろうな」

「……鮎さん。それで、一晩中歩き回ってたのかい?」

「…………」

「でも、それと、これと、何の関係が」


そぉですよ、何の関係が(__)


「集中できなかったんだ、仕事に」

「…………」

「疲れて顔を洗いに公園へ行ったんだ。その時、上着を脱いで拳銃も置いたような記憶がある。その後現場に向かって、持ち場に近づこうとした時に、気づいたんだ。拳銃を持ってない事に」

「戻って」

「あぁ、戻ったさ。でも、無かった。今は、ホントにあそこで無くしたのかさえ記憶が曖昧になってる」

「鮎さん」

「吉井さん、悪いが明日、少し抜けさせてもらうよ」

「鮎さん、それなら俺も一緒に探すよ」

鮎川さんは、首をゆっくり振った。

「いや、吉井さんは、仕事をしてくれ。これは、私の問題だ。もし、明日見つからなかったら、コレを」

と言って、鮎川さんは、胸ポケットから、警察手帳を出した。

「娘も守れないで、刑事の仕事も打ち込めないなら、私は」

「鮎さん……。本気か?」


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