加納欄の警察手帳 シリーズ24
几帳面な鮎川さんは、顔を洗うのに、上着を脱ぎ、水がかからないように、わざわざ胸のホルスターから拳銃を外して、上着の上に置いて、顔を洗った。


たまたま通りかかった男は、上着の上に置かれていた拳銃に目が行き、顔を洗っている鮎川さんの目を盗んで、拳銃を手に入れた。


グループのリーダーはミナトかも知れないが、このグループは、馴れ合いのグループじゃなさそうだ。


ただ、適当に、気のあった時に行動を起こすグループだ。


あたしは、保住組の傘下のビルに着くと、車から降り、ビルの入り口を見据えた。

距離、およそ50m。

頭に、大山先輩の顔がよぎった。


……大丈夫です(-.-;)


慎重に行動しますっ(>_<)


あたしは、大山先輩の残像を掻き消すと、歩き出そうした。

「おい、何やってんだ」

急に声をかけられ、振り向いた。

あたしの顔が一瞬強張る。

立っていたのは、保住組組長、保住吾郷だった。

あいっか〜らず、スーツをビシッと着こなしていた。

「久しぶりじゃねぇか」

「そうね」

「それに今回は、前とは違って、挑発的な格好してやがる。女はやっぱりスカートにかぎるな」


サイテ〜(-.-;)


「俺に会いに来たのか?それとも」

と言って、保住は、あたしの手首を取った。

「ちょっと(__)私忙しいんだから、ほっといてください。組長さんと遊んでる暇ないんですから」

と言って、手を振りほどこうとしたが、かなり、ガッチリ握られていた。

「前にも言ったろ。名前で呼べよ」

耳元で囁やくと、保住の片足が、強引にあたしの両足の間に割って入って来た。

保住は、あたしの片足を軽く持ち上げると、スカートの中に手を入れ、腿に手を置いた。

「アン。組長、さん」

あたしは、保住の首に手を回した。

「吾郷って呼べよ」

保住は、キスしようと顔を近づけながら、腿をまさぐり始めた手を止め、キスしようとしていた距離も止めた。

「物騒な物を仕込んでるんだな」

近距離のまま、保住の表情が変わった。

あたしも、保住を見つめたまま。

「そうよ。女の夜歩きは物騒だから。特に、うるさいハエが多い日はね」


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